中川 俊男 | 公益社団法人 日本医師会 会長 |
COI: | なし |
WHO(世界保健機関)の統計によれば、7月5日現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の累積感染者数は、全世界で1,112万5千名を超え、死亡者数は52万8千名余に至っています。
日本においても、7月6日現在の累積感染者数は1万9,991名、死亡者数は977名となっています。日本の感染者数、あるいは感染者数に対する死亡者数の比率は諸外国に比して低く、これは国民の理解と協力、そして医療従事者の献身的な努力の成果であると認識するとともに、あらためて深く敬意を表する次第です。
COVID-19に対しては、公衆衛生をはじめとする社会医学的な視点からのアプローチの重要性は論を俟ちませんが、医療現場で役立つファクトに基づく臨床医学的な対応が必要との判断から、日本医師会は4月18日に「COVID-19有識者会議」を会内に立ち上げました。
同会議のサイトにおいては、すでに数十にも上る素晴らしい論文等が公表され、その活躍はメディアばかりではなく、行政、教育関係者などからも注目されています。
一方、わが国においては国内感染者数が急増した4月~5月にかけて、都市部を中心に医療崩壊の危機に直面したのも事実です。
また、4月16日に発令された緊急事態宣言が、5月25日に解除されて以降徐々に感染者数が増加し、とくに東京都では7月7日現在、新規感染者数が5日連続で100名以上となるなど、未だ予断を許さない状況にあります。
COVID-19の感染再拡大、あるいは第2波、第3波の到来に備えつつ、もうひとつの課題である医療機関の経営再建を両立させなければ、国民皆保険下で公平、平等であるべきわが国の医療体制自体が存亡の危機に瀕することは火を見るよりも明らかです。
これらの事態を回避し、国民の生命を守り、医療従事者の安全を確保するためにも、今回のCOVID-19への対応、とくに一次医療、二次医療、三次医療体制等のあり方を検証し、今後の新興・再興感染症に対して、財政的支援を含め全国各地域で適切な医療が確保されるよう平時から備えておくことが必要です。
また、各地域において感染症に対する医療提供体制のあり方を具体的に検討し、整備していくことが不可欠の対応と考えます。
そのためにも、COVID-19有識者会議の活動がさらに充実、活発化し、日本医師会がその結果を政策として昇華し、国への提言につながるよう強く期待します。