中谷 比呂樹 | 慶応義塾大学 特任教授WHO執行理事 |
COI: | なし |
(2020年5月4日寄稿)
日本では、緊急事態宣言が延長されることとなり、COVID-19への戦いは長期に及ぶという認識が共有されつつある。そうなれば、感染症の予防・医療と社会経済活動のバランスが考えられなければならない。
第一報では、このチャレンジに直接かかわる「COVID-19 対策の次の段階に移るための公衆衛生と社会的対応の調整に関する暫定的ガイダンス 」(Considerations in adjusting public health and social measures in the context of COVID-19 Interim guidance: https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/331773/WHO-2019-nCoV-Adjusting_PH_measures-2020.1-eng.pdf) 2020年4月16日を紹介したが、今週も、先週公表された関連資料を中心にWHO情報を纏めてみたい。
なお、読者の便の為、原資料を大胆に意訳し、中谷自身の解説も加えてあるので、本文との齟齬があった場合にはWHOの本文を優先して頂きたい。
WHO加盟国にはCOVID-19検査能力が乏しい国がある。それらの国がCOVID-19の発生を正しく把握することが必要であるため、最初の5陽性検体と10陰性検体を確認検査の為にWHO基準検査施設へ送ることが推奨されている。 世界には、22か国・地域に22の基準検査施設があり、日本からは長崎大学熱帯病医学研究所が指定されている。
指定施設一覧は以下からダウンロードできる。
この暫定ガイダンスは、都市及び市街地を抱える地方政府や地元指導者・政策決定者が、COVID-19対策を強力に実施し早期の回復を行えるよう予防・準備の各般についての効果的なアプローチを定め、推奨される活動を行えるよう策定された。 「COVID-19 対策の次の段階に移るための公衆衛生と社会的対応の調整に関する暫定的ガイダンス 」(Considerations in adjusting public health and social measures in the context of COVID-19 Interim guidance:https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/331773/WHO-2019-nCoV-Adjusting_PH_measures-2020.1-eng.pdf) と合わせて読まれれば、焦眉の急である我が国の都市部をどうするかを考える際に参考となろう。
内容は、要約、はじめに、対象とする読者と目的、市街地の特殊性の記載に引き続き、次の4章よりなる。①都市及び市街地の特殊性、②COVID-19の市街地対応を考える際に留意すべき点、③CIVID-19の有効な対策を準備する際の重点領域、④将来の健康危機管理への準備、である。 以下に各章の大要を述べる。
都市及び市街地は、交通の要衝にあり、経済活動が盛んで、人口が密集している。医療資源が潤沢である反面、社会的格差やスラムの存在や、多くの健康弱者が存在するなど、感染爆発の素地となる都市特有の脆弱性があることを認識しなければならない。 特に配慮すべき健康弱者が例示されている:非正規居住者、貧困層、ホームレスなど居住困難者、移民・難民、単身高齢者、基礎疾患保有者、社会から疎外された集団、身体的距離確保策により問題が生じるリスクのある個人。 地方自治体は、これらの課題を克服して、危機に対応する管理体制と関係者とのパートナーシップを作らなければならない。
12の留意点があげられている:
以下の4つの重点項目が掲げられ、具体的な事例が紹介されている。
感染爆発に備えて可能な限りモデルを用いて需要予測をすること。真に必要な医療を提供するためには、検査を含め、医療アクセスへの障壁を高めることにより医療需要対策をとることもやむを得ないこと、COVID-19以外の超過死亡を避けるため予防接種やその他の基礎的な医療サービスは維持されねばならず遠隔医療の導入も考慮すべきこと、併せて医療の基盤となる水、廃棄物、医療資材、食料、エネルギーなどの安定供給を図るべきことなど。
対応のピークを過ぎた後も、COVID-19は引き続き対応が必要であり、このガイダンスで指摘したことを留意し、次のピークや、将来の同様な健康危機に持続可能な対策の強化に資するように取り組むことを提唱している。
なお、文末にANNEX 1として市街地におけるCOVID-19対策準備の留意点と推薦事項が一覧表としてまとめられており、本文のサマリーとなっている。お急ぎの向きは、まず、ここから読み進めるのが良いと思われる。
本文は以下からダウンロードできる。
WHOは、健康危機管理に関する知識を双方に共有するネットによるオンラインコースのプラットフォームOpenWHO(https://openwho.org/)を設けている。COVID-19については9つのコースが開設されており、内容は現場の医療関係者にとって参考となる。 言語については、日本語を含め19か国語が用いられているが、全部のコ―スが多言語で提供されているわけではない。
COVID-19のうち日本語でも提供されているのは「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防と管理」(https://openwho.org/courses/COVID-19-IPC-JA)の1つのみである。このコースは1時間程度とコンパクトで、「このトレーニングは感染予防と管理に重点を置いているため、医療従事者や公衆衛生の専門家向けです。」 と断った上で、「新型コロナウイルスなどの新しい呼吸器ウイルス感染症に対応するために、医療施設がどのような準備をすべきか、どのように感染者を見つけ、医療従事者や患者、そのほかの人々に感染を広げないよう適切な感染予防と管理を行うためにはどうすべきか、という情報を提供し」ている。その中味は「第一部 準備(preparedness)、即応性(readiness)とIPC、第二部 新型コロナウイルス(COVID-19):疫学、リスク因子、定義、症状、第三部 標準予防策、感染経路別予防策、COVID-19特有の推奨事項」と紹介されている。
英語で提供されているその他8つのコースは以下のとおりで、登録をすると無料で視聴でき、自分のペースで学習することができる。 特に(7)と(8)は包括的で、英語での視聴に大きな障害が無い方では、日本語による「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防と管理」を視聴された上で、公衆衛生面に関心があるか、臨床面に関心があるかを勘案してアドバンスコースとして学習を進められてはどうだろうか。 また、それぞれのwebでは、冒頭、コースを要約した短いビデオクリックがあり、課題を大雑把につかみたい人にも、コース選択に当たって中味を知りたい方にも便利なプレゼンとなっている。
OpenWHOのCOVID-19関係のページ(英語)は以下からアクセスできる。