中谷 比呂樹 | 慶応義塾大学 特任教授WHO執行理事 |
COI: | なし |
(2020年5月25日寄稿)
5月18日、19日の両日にWHO総会が、22日にはWHO執行理事会がバーチャルに開催され、COVID-19に立ち向かう国際社会の連帯が強調された一方、コロナのアウトブレークを一応乗り切った国、目鼻がつきつつある国、感染拡大に直面している国などの差異や種々の課題も浮き彫りにされた。 日本は、緊急事態宣言解除と第二波への準備のフェーズに移行しつあるので、今回は、WHO総会決議とWHO西太平洋地域事務局(地域事務局長:葛西 健 博士)が作成した検疫・隔離対策一覧とを中心に紹介したい。
EUが先導し、日本、英、豪、加、中、韓、印、ブラジルなど130ケ国が共同提案した決議案がWHO総会に提出され、コンセンサスで採択された。決議は、前文19パラグラフ、本文9パラグラフ(サブ・パラグラフを含めると35パラグラフ )に及ぶ包括的なものである。前文では、COVID-19のパンデミックの経緯に言及した上で、それに直面する世界の連帯を訴え、本文では加盟国、国際機関そしてWHO事務局長が行うべきことを列挙している。
加盟国向けには第7パラに15項目を設け、
国際機関にむけては第8パラで3項目を掲げる。
そして最後の第9パラではWHO事務局長が行うべきこととして11の項目をあげる。
COVID-19の感染を押さえる原則は、感染者の発見・隔離・検査・治療と濃厚接触者の追跡と隔離であるが、加えて、様々な公衆衛生・社会的対策がとられる。個人衛生、身体的・社会的距離確保、移動制限、特別な配慮を要する人口集団(高齢者・虚弱者、社会的弱者、閉鎖空間に居ざるをえないもの、リスクをともなう職業従事者)対応である。これらは感染阻止を目指したものではあるが、意図せぬ影響を出来るだけ回避して、感染症対策と社会経済的な影響とのバランスをとる必要がある。表1では取りうる公衆衛生・社会的対策のリストが提示されている。表2では、対策の実施にあたり配慮すべきこととして、コミュニケーションと地域社会を巻き込むことの大切さと対策に従える環境作りを、個人・地域のレベルと地方・国のレベルで行うことを分けて提唱する。最後の表3では、対策によって二次的に生じる影響を少なくする方策として、家族と地域社会支援、所得と経済の保護、水・食料の確保、必須保健サービスの確保をあげ、表2同様、個人・地域のレベルと地方・国のレベルで行うことを分けて提唱している。
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ワクチンが開発され公平に分配されるまでは、各国はヘルスシステムの強化のみならず、コミュニティの役割を大いに活用し、非薬剤対策(non-pharmaceutical interventions:NPIs)を通じてCOVID-19の大規模な市中感染を回避あるいは対応する必要がある。その為、地域社会の積極的な関与を得ることにより、COVID-19への準備と対応戦略の効果を最大化し、市中感染を防ぐことができる。WHOはこれまでCOVID-19に係る様々なガイダンス等を発表してきたが、この暫定ガイダンスはそれらを補完しさらなる普及や効果促進をもたらすものとされている。その上で、COVID-19の大規模市中感染状況における優先事項は以下の3点とし、それぞれに留意点が記載されている。
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この状況報告書は、4月30日から5月6日をカバーした第一号以来、毎週刊行されている。
最新のものは、5月13日~19日をカバーした第三号である。
各号では、感染状況報告、ハイライト、WPROの活動、一般へのメッセージ等が簡明にまとめられている。今回、最新の第三号ではなく、第二号を取り上げた理由は、各国の検疫と隔離の状況を一覧表にした貴重な資料が添付資料として含まれているからである。その部分はWPRO日本人職員有志のご好意により翻訳されたので、感謝とともに、文末に全文掲載する。原本と日本語訳に齟齬がある場合は英語版が優先することにご留意願いたい。
全文は以下からダウンロードできる。
WHO西太平洋地域各国 検疫[1]政策 |
5月15日にWHO西太平洋地域事務局において収集した情報に基づく |
[1]訳者注)検疫は、感染性の疾患に接触した者が発症しないか経過をみるために、隔離及び行動を制限すること。隔離は、感染性疾患の有病者を健康な者から引き離すこと。 |
WHO西太平洋地域各国 隔離[2]政策 |
5月15日にWHO西太平洋地域事務局において収集した情報に基づく 隔離(例:軽症、無症状例) |
[2]訳者注)検疫は、感染性の疾患に接触した者が発症しないか経過をみるために、隔離及び行動を制限すること。隔離は、感染性疾患の有病者を健康な者から引き離すこと。 |